事業案内

精神障害者の自立支援サービス計画事例集

平成17年度 厚生労働省補助事業「未来志向研究プロジェクト」

高齢精神障害者等の地域生活を支援する標準的サービスモデルの
支給決定基準の在り方に関する調査研究事業

精神障害者の自立支援サービス計画事例集

精神障害者の自立支援サービス計画事例集

この事例集は、平成17年度厚生労働省補助事業「未来志向研究プロジェクト」
『精神障害者の自立支援サービス計画に関する調査研究事業報告書』の付録資料です。

事例集の目的

自立支援サービスを必要とする精神障害者について、「年齢」「居住形態」「日中の生活状況または主軸となるサービス」が異なる類型別に、それぞれ必要な「標準的サービスのメニュー」を具体事例で表したのが、この事例集である。

事例集の作成過程

本研究班では153の事例を収集した。多様な事例を収集するために、通所授産施設、グループホーム、精神科病院、精神科診療所など、異なるタイプのサービス事業体から、大都市と地方都市など地域性も考慮して選び出して、事例を収集した

収集した全事例について検証してみたところ、必要とされる「自立支援サービスの種類と量」は、その事例の背景である「年齢・性別」「居住形態」と「日中の生活状況または主軸となるサービス」、それに大まかな障害の重さ「障害程度区分」によって、ある程度絞り込むことが出来ることがわかった。ここで言う「居住形態」とは、自宅(単身)、自宅(家族と同居)、グループホーム、生活訓練施設などである。また、「日中の生活状況または主軸となるサービス」というのは、ひきこもり、通所(デイケア、就労継続など)、就労支援、入院、などである。

そこで、収集した全事例を、「年齢」「居住形態」「日中の生活状況または主軸となるサービス」の組み合わせで類型化した。各類型から、障害程度区分も考慮して、代表的事例54例を選び出して事例集に掲載した。

事例集に掲載されていること

この事例集では、「事例の概要」、「サービス計画表」、さらに障害程度区分など幾つかの「評価尺度による評価」を掲載してある。

「事例の概要」には、家族歴・生育歴、居住地、収入、病歴・生活歴、現在(の状態と状況)が簡潔に記載されており、事例の全体像を具体的にイメージ出来るようにした。

「サービス計画表」の作成は、計画立案に必要なステップを踏んで行われている。まず、国際生活機能分類(ICF)に倣って生活・人生領域を「日常生活」、「疾病・健康管理」、「社会参加・対人関係・コミュニケーション」、「修学・就労」の4つの領域に分けて、アセスメントが行われている(註.ICFでは生活・人生領域を9つに分けている)。アセスメントの結果に基づいて課題を抽出し、抽出された課題毎に目標と具体策を提案して、本人や家族の意向を聴取している。その上で、実現すべき目標を明確にしている。目標は小目標に分け、それらを達成するのに必要なサービスメニューを、インフォーマルサービスとフォーマルサービスを組み合わせて、組み立てている。

評価尺度としては、障害程度区分一次判定、精神障害者社会生活評価尺度(LASMI)、簡易精神症状評価尺度(BPRS)、それに今回特別に追加した評価項目の危機管理(C)とマヨネーズ版精神症状評価追加項目(M)を利用した。そのうちLASMIの評価結果は、視覚的に掴めるようにレーダーチャートで示してある。

「事例の概要」を読んで事例をイメージした上で「サービス計画表」を眺めると、その事例が、どのようにアセスメントされるか、どのようにサービス計画が立てられて行くか、経過をたどれる。さらに、「評価尺度による評価結果」を「事例の概要」や「サービス計画表」と対比すると、事例を違った角度で眺めることが出来る。

事例集の目的

精神障害者への自立支援サービスは、アセスメントを十分に行った上で、目標を明確にした上で、行われる必要がある。そのためには、「アセスメントに基づくサービス計画表」の作成が欠かせない。

残念ながら、未だ「アセスメントに基づくサービス計画表」の作成は十分に普及していない。そのために、サービスが場当たり的であったり、画一的であったり、漫然と行われていたりする。精神科病院の「社会的入院」は、サービス計画表を作成する"風習"がこれまでなかったことが原因のひとつとも考えられる。精神科診療所でも、診察以外に何のサービスも受けないまま、長年にわたって引き籠もっている人たちがいる(精神科診療所滞留群)。また、共同作業所や授産施設でも、画一的な作業プログラムが漫然と続けられているだけで、長年にわたって“滞留”したままでいる人たちがいる(福祉施設滞留群)。こうした“滞留”は、“障害の重さ”からやむを得ないこともあるだろうが、ひとりひとりの障害者に「アセスメントに基づくサービス計画」を作成して来なかったことも大きな原因になっているのではないか。

障害者自立支援法では、障害福祉サービスを利用する者のうち、一定の要件を満たす利用者については、市町村もしくは市町村が指定した相談支援事業者が「サービス利用計画」を作成することとなっている。また、要件を満たさない障害者についても、介護給付、訓練等給付などのサービス毎に、サービス管理責任者によって「個別支援計画」を作成することになっている。「個別支援計画」には報酬が付けられていないなど不備な点が多いものの、「アセスメントに基づくサービス計画表」の作成が、端緒的ではあっても、義務づけられたことは大いに評価されることだ。

この事例集に記載されている様々なタイプの精神障害者の「アセスメントに基づくサービス計画表」は、障害者自立支援法での「サービス利用計画」や「個別支援計画」を作成する際に、参考になるであろう。さらに、長く懸案になったままで導入が進んでいない「ケアマネジメント」の本格導入にも、この事例集が役立つことを期待している。

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