メンタルケア協議会とは

設立趣旨書

精神障害に苦しむ人はいつの時代も大変に多い。しかし、近年、少子高齢化、産業構造の変化を受けて、地域、職場、学校、家庭のあらゆるところで日本社会が急激に変動しつつあり、そのことが影響して、障害に苦しむ人の数が顕著に増加しており、障害の態様も変化し、国民の精神科医療・福祉へのニーズは高まる一方である。

しかしながら、高まるニーズに対して日本の精神科医療・福祉は依然として水準が低い。診療所、病院などの医療機関、デイケア施設、福祉作業所、生活支援センター、共同住居などの医療・福祉関連施設は、次第に整備されて来ているものの、それらは、技術水準やマンパワーにおいても、立地・建物・設備など施設条件においても、施設のマネージメントにおいても貧弱である。施設相互の連携も十分ではない。さらに、障害を持つ人及びその家族に対する医療費などの公的助成などの福祉制度も、次第に整備されてきたとは言え、まだまだ不十分であり、最近では国や地方の財政事情から後退すら見られる。

日本の精神科医療・福祉を飛躍的に再編し高度化する必要がある。それには、精神科医を初めとする精神科医療・福祉従事者が、精神障害者のニーズに応えるべく、大いにその能力を高め、主体性を発揮出来るようにする必要がある。同じく診療所を初めとする諸機関・諸施設が、精神障害者のニーズに応えるべく、大いにその事業展開力を高め、自立性を発揮出来るようにしなくてはならない。さらに、障害者や、障害者を家庭や学校、職場、地域で支えている人たちが、もっと持てる力を発揮出来るように、その人たちを助成する制度や支援活動が求められる。

1999年夏に、主に精神科診療所に身を置く精神科医が呼び掛けて「地域メンタルケア協議会」が作られた。以降今日までの間に、この協議機関は、介護保険制度の導入、精神保健福祉法改正(移送制度の導入)、診療情報開示の制度化、精神障害者ケア・マネジメント制度の導入など日本の精神科医療・福祉が直面する喫緊のテーマに関して情報収集、調査研究を行い、公開カンファランスを開催してきた。そうした活動によって、精神科の医療と福祉に携わっている専門家の意識を深め、喫緊のテーマに対して積極的な取り組みを促してきた。

「地域メンタルケア協議会」が目的とすることは、精神科の医療と福祉を担っている精神科医、看護婦、保健婦、精神保健福祉士、カウンセラーなどの医療・福祉スタッフ、及び診療所、病院などの医療機関やデイケア施設、授産施設、グループ・ホームなどの医療・福祉関連施設に対して、情報の提供、研修、コンサルティング、相互連携の促進、などの支援活動を行うことである。さらに、障害者を持ったひとたち、並びに障害者を家庭、学校、職場、地域で支えている人たちが、持てる力を発揮出来るように、情報の提供などの支援活動を行うことである。こうした活動を行うことによって、精神障害を持った人たちやその家族、社会のニーズに応える、公正で、より効率的な、精神科の医療と福祉の実現を目指したい。

こうした「地域メンタルケア協議会」の活動をいっそう組織だって展開するするべく、組織を大きく整備し直し、今日、「特定非営利活動法人メンタルケア協議会」として新たに出発することにした。

私たちの活動が日本の精神科医療・福祉に明るい未来を切り開くための一助になることを切に祈念している。

2001年7月2日

特定非営利活動法人 メンタルケア協議会
代表者 羽藤 邦利