事業案内

第3回シンポジウム

「精神障害者ケアガイドライン」にどう臨むか

サブテーマ
「精神障害者通院医療費公費負担の適正化のあり方」
(通称32条問題)の動向について

概要

日 時
平成13年2月4日(日) 午後1時~5時
会 場
全理連ビル9階会議室(JR代々木駅北口前 TEL: 03-3379-4111)
会 費
3,000円
懇親会
午後5時~6時半 会費2,000円
主 催
地域メンタルケア協議会

メインテーマ

「精神障害者ケアガイドライン」にどう臨むか

シンポジスト
高橋 清久(国立精神・神経センター総長)
浅井 邦彦(医療法人静和会浅井病院院長)
窪田 彰(クボタクリニック院長)
司 会
田中 孝雄(赤羽田中クリニック)
羽藤 邦利(代々木の森診療所)

「精神障害者ケアマネジメント」をご存じでしょうか

「精神障害者ケアマネジメント」という新しい制度が平成14年度より実施に移されます。簡単に言えば、地域で生活する精神障害者のケアを包括的にマネジメントしようとする制度です。マネジメントの実施主体は都道府県です。マネジメントの業務を担うのはケアマネジャーです。各都道府県がどのように実施するかの指針を厚生省は「精神障害者ケアガイドライン」として示しています。

高齢者や他の障害者のケアマネジメントと相似形です

厚生省の「精神障害者ケアガイドライン」には色んな「理念」が羅列され、「手続き」が細かく定められ、詳細な内容の「書式」が用意されています。その要点をピックアップすれば、「ノーマライゼーションの理念に基づく、利用者のニーズ中心のサービス提供、障害者の自立と質の高い生活実現への支援、自己決定権の尊重、社会的理解の促進」がケア理念として唱えられ、それらの理念を実現を目指して、欧米等で発展してきた「ケアマネジメントの技法に基づくケアサービスの提供を行う」と記されています。具体的には、ひとりひとりの障害者に対して「ケアマネジャー」が「ケアアセスメント」を行い、「ケア会議」を主催して「ケア計画」を立て、それに従って「ケアの実施」を実施機関に「依頼」します。さらに「実施状況の確認と調整」も行うとなっています。一連のプロセスに於いて「インフォームドコンセント」と「プライバシー保護」が唱えられています。ケアアセスメントの為の「アセスメント票」、ケア計画の為の「ケア計画書」が用意されています。いずれも詳細な内容でもって書式が定められています。ケアマネジメントの実施者は都道府県ですが、実施機関は市町村の保健センターや福祉事務所、都道府県の保健所、精神保健福祉センター、精神障害者社会復帰施設、精神科医療機関に「委託」して実施するとあります。

医療との関係はどうなるのでしょうか?

細かいことをすべて省いて、ごく簡単に言えば、「今回の日本型ケアマネジメント」では、ひとりの患者さんについて、作業所に通所する、ホームヘルパーを派遣してもらう、デイケアに参加する、といったことは、介護保健でのケアプランと同じように「ケアマネジャー」が「ケア計画」を作って「実施」することになるようです。では、その場合、担当医や担当ケースワーカーは何をするのでしょうか?記載されているものを読む限り、ケア計画を立てるケア会議に「関係者」として出席を依頼される(必ずではない)と書いてある以外は特段の規定はありません。担当医や担当ケースワーカーは役割がないのです。どういうことなのでしょうか?

高齢者や他の(身体障害などの)障害では「医療」と「ケア」がある程度区別して扱われており、ケアの部分についてはケアマネジャーがマネージしています。精神障害もそれと同じように扱う積もりなのでしょうか?しかし精神障害が他の障害と違うところは「ケアの在り方」で病状が(時には大きく)動くことです。精神障害について医療とケアを分けて扱うのはとても出来ることではありません。それを敢えてケアと医療と切り離して、他の障害と同じように、ケアをケアマネジャーに任せてしまうとトラブルが起こるのを避けられなくなるのではないでしょうか。まず、ケアマネジメントで起きる病状の悪化(時には重大な)に誰が責任を持つのかといった「責任問題」が必ず生じます。さらに、ケアマネジャーとしてはケアをマネジメントしている積もりで行っていることが、医療サイドには(時には重大な)「干渉」となってしまい、「職種間の争い」のようなことが頻発することになるのではないでしょうか。実は、これまでに行われたケアマネジメントのパイロットスタディに於いても、担当医や担当ケースワーカーに連絡なく患者さんのデイケア先が振り替えられた云々で多少のトラブルが起きています。

民間機関の役割はどうなるのでしょうか?

「分散化あるいは分断化している地域ケアを統合・調整する」、「公的なサービスの他に、民間のサービス、ボランティア、親類、近隣の人々等によるインフォーマルなサービスも検討する」とあります。こうした表現からすると、地域の患者さんへのサービスをすべて包括してマネージしようというふうに取れます。それだけのマネージを「都道府県が実施者」となって行うのです。マネジメントだけではありません。サービスの中身についても「民間機関がサービスの実施機関になる場合は可能な限り市町村など行政機関と連携しながら進める」とあります。マネジメントからサービスの中身まで行政が主導しようとしているように読めます。そんなことが本当に行えるのでしょうか。例え行えたとしても、望ましいことなのでしょうか?

このまま進んで大丈夫なのでしょうか?

今回の「厚生省の精神障害者ケアガイドライン」は、高齢者や他の障害者のケアマネジメントとは全くの相似形です。しかし長年に渡って積み上げられてきた「精神科独自の医療とケア」の方法とは異質なものです。このまま実施されると、本来不可分な医療とケアが強引に分離することになりかねません。民間の機関と公的機関の役割分担が一変することも予測されます。それだけの「変革」を行おうとしているのに、大多数の精神科医療従事者に知らされておらず、コンセンサスも出来ていません。これでは混乱が避けられないのではないでしょうか。

医療現場にいる者どうしで早急に討議する必要があるのではないでしょうか?

早急に現場の医療に携わっている専門科どうしで討議する機会を持つ必要があります。残念なことですが、こうした課題を討議する場があまり見当たりません。「地域メンタルケア協議会」が数少ない場となっています。今回シンポジストをお願いした先生方はいずれも厚生省の「障害者ケアマネジメント体制整備検討委員会精神障害者部会」の委員を務めておられます。この新しい制度について最も適切に解説して戴ける方々です。先生方に医療現場からの視点をぶっつけ、「望ましい精神障害者ケアマネジメント」はどうしたら実現出来るのか、方向を探りたいと思います。

サブテーマ

「精神障害者通院医療費公費負担の適正化のあり方」
(通称32条問題)の動向について

レポーター
菅野 圭樹(すがのクリニック院長)
厚生省「精神障害者通院医療費公費負担の適正化のあり方に関する検討会」委員
司 会
三浦 勇夫(三浦診療所)

「精神障害者通院医療費公費負担」が急増していることから「適正化」が検討されています。見直し方次第で精神科の外来医療に甚大な影響が生じます。どのような事態になっているのか勉強し、医療現場からどのような声を挙げたら良いのか討議してみたいと思います。日本精神科診療所協会から厚生省のこの問題の委員に出ておられる菅野圭樹先生からレポートをして頂きます。